朽木事務所

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遠すぎた深圳

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1984年のことです。初めて海外出張に出かけました。そもそも外国に行くのが初めてでした。成田から香港で乗り換えて中国広州まで。開発が始まったばばかりの深圳で大規模なパーティを開催するにあたっての準備のお手伝いが名目です。本当は、現場を見せてやろうという上司の親心かと思います。

招待客のリストを作ったり、招待状の宛先をタイプしたり配ったり、出席者の席次表を作ったり...... そんな仕事です。

中華人民共和国建国35年を祝う10月1日、国慶節。政府・財界の要人を集めて、パーティは、当時建設の槌の音高き深圳経済特別区行われる予定でした。場所は、East Lake Hotel 東湖賓館です。

当日の私の役目は、広州からバスで移動する日中両国の来客の方々にアテンドして、深圳に連れて行くことでした。

 

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まえまえから、

「バスの運転手に直接会って、地図と住所を渡して、しっかり確認させて、間違えのないようにしておけよ!」

きつく現地の管理部長であるY-さんから言われていました。

会社の中国人スタッフを連れて、ホテル所属のバスの運転手さんに直接会って、確認したのはもちろんです。

 

「知道、知道! 没有問題〜 
だいじょぶだいじょぶ、心配ないよ〜(^ω^)」

運転手さんは、自信を持ってうなずきます。

 

さて、当日、広州の中国大酒店 China Hotel を定刻の8時ちょうどに出発です。

およそ、1時間ほど走ったでしょうか......

運転手さんが、不安そうにきょろきょろし始めました。

 

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どしたの?

「我不知道〜......(わかんないよ〜)」

えええ? あれだけ確認したし、地図もあげたじゃん?

「没有〜 (ないよ〜)」

もってこないの、 あんた!

 

パニック、怒り、不安、どうしましょ! 同行している中国政府サイドのお客様も道は知りません。皆さん広東以外の地方ご出身でどなたも深圳は初めて。当時は中国人といえども国内移動はそんなに簡単ではなかったんですよ (;;;´Д`)

 

 

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...そこで助けてくださったのが、お客様のお一人である日本の政府系銀行の駐在員の方。

流暢な中国語で、運転手さんに道の説明をしてくださいました。

 

助かった!

 

深圳についてから、前乗りしていた管理部長のY-さんと一緒に、その銀行員さんに丁寧にお礼をしたのは、もちろんです。

 

++++++++

 

「運転手には、ちゃんと事前に確認したんですが......」

管理部長のY-さんは、不思議と怒りませんでした。それが一層怖かったです。

 

「お前の仕事は、運転手に事前に確認することじゃない。広州からの来賓の方々を、無事に深圳に連れてくることなんだ」


・仕事の本質を見誤ってはいけない。

肝に命じました。

・相手が「わかった」と言っても容易に納得してはいけない。

いやー、いま思い出しても、冷や汗が出ます。

しかし、30余年前、助けてくださったの日本興業銀行(現みずほ銀行)の広州駐在員の方、お名前も忘れてしましました。ごめんなさい。そして、ありがとうございました!
 

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