人事採用の面接のときに「面接担当者が聞くべきたった一つの質問」みたいな文章をネットで読んだ。
「あなたは五年前何をしていましたか? そして五年後なにをしていたいですか?」
「あなたの人生の中で、最良の時はどんなときでしたか? 最悪の時はどんなときでしたか?」
それが人事採用の面接のとき「応募者の人間性や能力がたちまちわかる質問」なんだって。他にも別バージョンがあったよ、「たった一つの質問」が。
たちまちのうちにピタリと分かる!
落語に出てくる易者かよ。
あ、そうか、こんな質問をして「はい、私の場合、最良の時とは、ペラペラ〜〜」ってスラスラ答えてくるやつを落とせばいいのか。なるほど。
以前、ラジオの朝の番組を聴いていたときのこと。
DJはぼくより少し年配の男性で、ウィットに富んだおしゃべりと洒落た選曲がとても魅力的な朝の番組。京都で大学で先生もやってらっしゃる方です*1。
こんな内容のことを話していたと記憶する。
最近は、やりたいことや自分の好きなことを仕事にしようと考える若い方が多いらしいのだが、やりたいことや好きなことを仕事にしていても、意に沿わないけれども必要だからしなければならない業務や、その業務がどうしてもうまくできないとき、あるいは、結果が伴わなくてつらい業務というのも出てくる。そんな業務が目の前にあったとしたら、どうするのか? ....と若い学生に問いかけると、彼らは答えに詰まってしまう。
これを聴いていて思い出したのが、ずうっと以前に、日経新聞の「私の履歴書」で読んだあるエピソードだ。功なり名を挙げた運のいい財界人が書いたものだが、その人は就職面談のときに「君の上司が、君に現金を渡して、これを政治家に差し出してこい、と命令したとする。君ならどうする?」と聞かれたという。
もちろん現代なら、「法令違反・コンプライアンス違反だから従えません」というのが当然の模範解答だが、その面談が行われたのは戦前のことで、ある種そういう献金ともワイロとも小遣い?ともつかぬ金のやり取りは事実として行われていた時代のことではある。
それで、その「私の履歴書」の方はどうしたかというと......
「うーん」、と考え込んでしまって、相当長い間答えられなかった、と。そのうちに面接官が「.......もういいです」と言ってくれた、そうです。
エピソードとして出来すぎかな? でもぼくは本当のことが書いてあると思うよ。
・業種としては好きな仕事なんだけれども、自分に与えられた仕事が意に沿わないとき、辛いとき、あるいは、下積みの仕事だったりどうしようもなくうまくいかない仕事だったらどうするか?
あるいは......
・違法ではないものの、自分の倫理的道徳的には問題の多いことを命じられたときどうするか?
そんなときどうするか?こんな質問をされたら、今のぼくでもうまくは答えられないけど、その人間を知るための、その人間が「仕事」というものをどう考えているのかを知るいい質問だと思うな。
『具体的な場合によります。どんな場合ですか?』
そう答える人はいるかな? でもそれは逃げだ。質問に答えていない。面接とは面接官との些細な勝負の勝ち負けじゃないんだ。ぼくが面接担当ならそんな切り返しをしてくるやつは「そうですか」で面談を終えてネガティブな評価を下す。
そもそも質問に質問を返してはいけないのだ。
「質問に質問で返す」これは奥州藤原氏の流れに古くから伝わる秘伝「問答山彦」という技で、主君が絶体絶命のときに、家臣たる自分の命を引き換えにする場合しか繰り出してはいけないとされる。
冗談はともかく、「虎を追い出してくださいな」なんていう「秘技・ヤマビコ」は厳しい現実では通用しない。
がっちりぶつかっていかなくちゃ。
追記:
面接で「人間性」を見抜くとか、そもそも他人の「人格」といったものを面接担当官が評価するなんてことがおこがましい。採用面接では、その人の技量(語学とかPCスキルとか)や経歴とかを中心に質問を組み立てるほうがよっぽどいいと思っています。
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*1:京都FM、αステーションのサトウヒロキさんです。関東でもラジコで聴いてるし。